2024年度 木の日研修
安全研修
【開催日時】2024年4月4日(木) 19:00~21:53
【開催場所】リモート(ZOOM)
【主催】森林インストラクター東京会
【講師】
(第1部)
「事故事例から見える日ごろのリスクマネジメントとCONE保険について」
オフィステラ代表取締役 町頭隆児さん(CONE保険の保険代理店代表)
(第2部)
「FIT安全対策の手引きの使い方とCONE保険申請手続きの説明」
FIT安全部会 前部会長 入江克昌さん
【スタッフ】主幹事:萩原卓(募集案内担当を兼務)、
副幹事:立川洋一、情報担当:西出幸子
【参加者数】35名(応募者49名の71%)
【報告者名】立川洋一
【内容】
2024年度第1回木の日研修を2部構成で実施した。
第1部は、はじめにCONE保険の成り立ち(全体の仕組み)の説明。NPO法人自然体験活動推進協議会(Council for Outdoor&Nature Experiences:略称CONE)が保険契約者となり、引き受け保険会社と保険契約を結んだ団体保険。CONEの一般会員である一社)全国森林インストラクター協会(以下FIJ)が申し込む形で、森林インストラクター東京会(以下FIT)は、FIJを窓口として加入申し込みをしている。FITは、いわゆる孫会員。
続いて、本題に入り、FITの事故事例について解説。町頭講師は、ぜひ、やっていただきたいのは「リスクマネジメントの手順」を基本として取り組むことと力説した。活動のリスクや安全対策の優先順位が明確になる。その上で、CONE傷害保険について、対象となる活動、保険事故が起きた際の保険請求、最近の注意点として「自然体験活動現場においてのハラスメント」について説明があった。また、CONE保険の損害賠償責任保険の意義についても説明があった。
20時5分より質疑応答。町頭講師は質問に答える形で以下をポイントしてあげた。
① 事前の危険告知。募集要項や当日朝の説明の両方をおすすめする。また、解散する際には参加者に怪我の有無確認をした上で解散宣言を行うこと。
② 参加者(負傷者)に傷害保険請求の案内の仕方には注意をはらう。保険金支払い内容も理解しておく。例えば、通院1日当たりの保険金は出るが、治療実費や交通費は出ない。
20時30分より第2部開始。入江克昌前安全部会長より資料(「安全研修(座学編)」に沿って、説明があった。4/21に実地安全研修を行う、そこでチェックリストを資料配布するので、これをFIT全体で共有できるように手配するとの説明もあった。21時10分より質疑応答。21時40分終了。司会者がチャットに貼り付けたURLからアンケートを回答するように呼びかけ、21時50分に参加者は全員退出した。
講義、質疑、アンケートは具体性に富んでおり、研修は有意義だったと報告したい。
*図表をクリックすると拡大表示されキャプションが出ます。
「雑木林と江戸の生活」と「ボルネオの熱帯雨林」
【開催日時】2024年3月16日(土)12:30~14:00
【開催場所】後楽園「林友ビル」6階
日本森林林業振興公団会議室
【主 催】森林インストラクター東京会
【講 師】宮入芳雄氏(FIT)
【スタッフ】みきの会(令和3年)
【参加者数】43名
【報告者名】氏家清高
【内 容】
「雑木林と江戸の生活」
多摩丘陵の原風景。町田市小野路辺り。藁葺きの農家があって常緑照葉樹の鎮守の森がある。
春の雑木林
春になると最初に雑木林の林床にスプリングエフェメラルという植物が出現する。春一番で光を遮るものがない状態の中で花を咲かせ、実をつけて、次の春まで眠ってしまう。代表的なものにカタクリの花がある。多摩丘陵のカタクリの花は色が浅い。寒い地方ではカタクリの花は色を濃くする。いろいろ説はあるが、虫が少ない地方は花びらを濃くして虫を誘う。あまり濃くなると動物に食べられてしまうのでそこは調整する。
そして、春一番でキツネノカミソリの葉が出る。夏前にその葉が枯れるが、お盆の頃に花茎だけを出し花を咲かせる。彼岸花に似ている。キツネノカミソリは葉だけを見ているとスイセンの葉に似ている。キツネノカミソリは真っ直ぐに葉が出ているのに対しスイセンの葉はねじれている。
芽吹きの頃になると、雑木林を遠くから見ると金や銀で彩られる。コナラの芽は銀色、クヌギの芽は金色に見えるためである。両者ともに葉が展開する前に花を咲かせる。風で花粉を運ぶ風媒花のため、葉が展開するとその葉が邪魔になる。一方、虫に花粉を運んでもらいたい植物がある。虫に目立つよう小さな花は塊になる。クロモジの黄色い花が虫を誘う。
夏の雑木林
夏の雑木林は作業を行うには適していない。虫の天国。
秋の雑木林
一般的に、色のついたキノコは危ない・虫がついたキノコは大丈夫・縦に裂けるキノコは食べられると言われるが、大体皆間違いである。タマゴダケは傘の部分を網焼きにするとたいへん美味しい。傘が真っ赤で柄が黄色の特徴があるのですぐそれとわかる。一番危ないのがドクツルタケ。食べると危険である。重要なのは全部真っ白いキノコに手を出してはいけないということ。
冬の雑木林
冬の雑木林は案外暖かい。光が入り、風もなく、虫もいない。のんびりするにはいいところ。冬の楽しみは葉痕。クズの葉痕はトトロ、オニグルミの葉痕は猿や羊の顔、ハリエンジュの葉痕はデビルマン、カラスザンショウの葉痕は千と千尋のカオナシ。
武蔵野の雑木林
昔、関東周辺に落葉広葉樹林の雑木林はなく、南関東周辺は暖温帯の常緑照葉樹林帯でカシやヤブツバキが茂っていた。カシ類は成長が遅い。そこで冷温帯の木であるクヌギやコナラを関東周辺に植え、それが雑木林となった。
江戸の町民の生活
江戸時代の享保年間に江戸の人口は120万人に達した。120万人の内訳として武士が70万人、町人が53万人。町人の大半は大川(現在の隅田川)の周辺に住んでいた。
町人は一軒の家を半分に割った棟割り長屋の四畳半くらいの部屋に一家が住んでいた。昼間、子供は部屋の中に居場所がないので外で遊んでいた。押し入れがないので、昼間は畳んだ布団を衝立で隠していた。長屋にはカマドがあり、燃料の薪を供給するため雑木林を作る必要があった。
江戸の上水道
神田上水、玉川上水、本所上水の3つの上水から水を引いて、江戸の街は上水道が完備されていた。しかし、江戸の街には下水道がなかった。下水道がなくてどうしていたか?江戸と多摩との境である四谷三丁目辺りで、肥溜めに溜めておいたものを多摩方面の農家が江戸に必要な野菜の肥料として受け取っていた。農家はそれに見合うだけの野菜を持って来て交換した。
炭作りと皆伐更新
皆伐更新の周期は南多摩では、クヌギ8年ナラ10年と言われていた。握り拳くらい太さであるとちょうど薪として割る必要もなく、炭にするのにいいサイズとなる。多摩丘陵ではこのサイクルで伐っている。炭焼きは、アラカシやシラカシを白炭の作り方で一気に冷やすことで硬い炭にする。
関東雑木林は皆伐更新で定期的に伐る。切った切り株からはひこばえが生える。成長のいい枝を2本から3本を残して、全部切ることをもやわけという。その後、5年、10年、15年と経てば立派な雑木林となり、15年サイクルで更新を行っている。
「ボルネオの熱帯林」
クチン
クアラルンプール空港から乗り換えてボルネオのサラワク州へ行く。ボルネオ島は世界で3番目に大きな島で、北1/3がマレーシアで南2/3がインドネシア。今回行った所は、マレーシアが管理しているボルネオの左の端にあるマレーシアの古都であるクチン。昔、イギリス人の国王が統治した「サラワク王国」の首都として栄えた。クチンは猫という意味があり、至る所に猫のモニュメントがある。
グヌンガデン国立公園
クチンからバスで2時間。ラフレシアを見に行った。森へ行けばどこにでもあるというものではない。あと一週間で咲くラフレシアの蕾があったが、滞在時間が限られている。花が終わった後の残骸の写真を見せていただく。
バコ国立公園
半島を完全に封鎖しているので、陸から入ることができず船に乗って入る。遠くにサンツボン山が見える。海岸をヒゲイノシシが歩いている。この国立公園の目玉は猿。テングザルやマレーヒヨケザル(注:ヒヨケザルはサル目ではなく、ヒヨケザル目であり、分類学的にはサルではない)が見られる。海岸沿いの多くの植物や動物を解説していただく。
クチンのワイルドライフリハビリセンター
ここは親を亡くしたオランウータンや人間に迫害され自活できないオランウータンを自然に近い生活をさせて、自然の中で生活できるようになったら、ジャングルに戻すことを行っている。ここでオランウータンが出てくるのを待つが、ドリアンの時期であるためか、1時間待っても出てこなかった。
首かり族の集落
現在、首かりは行っておらず、昔の戦利品を観光用として飾っている。民族舞踏を見て帰ってきた。クアラルンプールへ戻り王宮へ行く。クアラルンプールには王様がいて、マレーシアでは何年かの周期で王様は交代する。独立記念碑や街の中心の写真を見せていただいた。
最後に訪れた郊外にあるFRアイテム森林研究所の、多く日本人にとって馴染みのない熱帯植物を写真と共に解説していただいた。
(感想)
今まで知ることがなかった雑木林誕生の背景や歴史を江戸町人の生活との関連から学び、「江戸名所図会」の細かいところをじっくり見ることで、昔の江戸町人の生活に思いを馳せることができた。それとは対照的に、「ボルネオの熱帯林」では我々の知らない熱帯のジャングルについて写真とともに解説していただき、現在の熱帯林を垣間見ることができた。宮入講師、ありがとうございました。