2023年度  野外研修


1月28日(日) 「野鳥研修・冬季の浅川の野鳥を楽しむ」 

 

キセキレイは「チチンチチン」と高い声で鳴く(土屋信之さん撮影) 
キセキレイは「チチンチチン」と高い声で鳴く(土屋信之さん撮影) 

 

【実施日】 2024年1 月28日(日)

【場 所】南浅川五月橋~水無瀬橋~横川橋、浅川鶴巻橋

     ~北浅川メタセコイア化石群

【実施概要】浅川を散策し冬季の野鳥の暮らしぶりを探る

【参加者】16名 

【講 師】後藤裕子(FIT)、加古明子(FIT)

【スタッフ】小勝眞佐枝

【報告者】熊木秀幸

 

【本文】

寒中薄曇りではあるがそよと吹く風もほとんどなく野鳥観察には心地良い天気。

講師の説明を受けながら多くの鳥たちの観察ができ、とても楽しく有意義な半日であった。

西八王子駅から北に向かい南浅川及び北浅川沿いを歩く。

休憩を兼ねて、途中途中で講師からのレクチャーを受ける。

 

・<最初はセキレイについて>

絵と生息分布地図を用いてのハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイの生態と体、鳴き声の特徴

 

・<次にはカルガモについて>

水面採取ガモであり足が体のほぼ中央にあること、オスメスほぼ同色であるがメスの方が体色が白っぽいこと、日本全土に分布繁殖するが本州以南は留鳥になっていること、板歯(ばんし)があること、目には瞬膜があること、翼鏡(よくきょう)と言われる金属光沢の次列風切羽があること、尾脂腺から分泌される脂を嘴で取りそれを羽に摺り付けて水を弾くようにしていること、留鳥だからヒナが見られること、陸で生まれて川に移動する等々

 

・<最後は北浅川の河原に現存するメタセコイアの化石について>

昭和42年に発見されたという約200万年前のメタセコイアの樹幹化石。焦げたような木炭のような黒々とした大木の根元の化石が紹介された。

 

・出会った鳥たち(23種)

カルガモ、コガモ、キジバト、カワウ、アオサギ、ダイサギ、トビ、カワセミ、モズ、ハシボソガラス、シジュウカラ、ヒヨドリ、ウグイス(声のみ)、ムクドリ、ツグミ、ジョウビタキ、スズメ、キセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、カワラヒワ、カワラバト、ホオジロ

 

*セキレイクイズの答え

①ハクセキレイ 分布C ②キセキレイ 分布B ③セグロセキレイ 分布A

 

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12月9日(土) 「冬芽観察入門(昭和記念公園)」 

 

 

【実施日】2023年12月9日(土)

【場 所】国営昭和記念公園

【実施概要】初心者を対象とした冬芽観察のポイントの

      解説と観察。春を待つ樹々の小さな芽を観し、   

       その個性豊かな姿から樹木の名前にたどり着く。

【参加者】23名

【講師】臼井治子(FIT)、高橋喜蔵(FIT) 

【スタッフ】小勝眞佐枝、福山容子

【報告者】戸部美紗子(森守会/令和4年)

 

イロハモミジの冬芽を観察する参加者
イロハモミジの冬芽を観察する参加者

【本文】

暖かく好天に恵まれたなか冬芽観察会が開催された。

2班に分かれて、講師より、冬芽の用語や種類についての説明を受けた。冬芽は、形、色、つき方、芽鱗(冬芽を保護する鱗状のもの)の有無、毛の有無などの特徴で見分けることができるようだ。

 

まずは近くにあるドウダンツツジから観察を始めた。各自ルーペを覗いて観察をすると頂芽(枝の先につける芽)は無毛で芽鱗があるのが確認できた。

 

続いて、ケヤキ、コナラ、イロハモミジ、モミジバスズカケノキなど、次々と観察をしていった。イロハモミジの冬芽には基部に膜質鱗片があるのを観察することができた。また、モミジバスズカケノキの樹皮をめくると冬眠中のプラタナスグンバイがいたようで、見つけた方に見せていただき、軍配の形をした乳白色の体をルーペではっきり見ることができた。

その後も、並生芽(副芽が横に並んだもの)のウメ、葉痕が動物の顔のように見えるクズなど、多くの冬芽を観察していった。

 

最後に、講師がお持ちくださった枝を手に取って冬芽を観察した。冬芽で見分けるのは難しいと思ったが、半隠芽のキウイフルーツ、髄が階段状のサルナシ、ツヤのある黒褐色の冬芽のフサザクラ、毛の多い冬芽のヌルデ、花芽が集団でついているハナズオウなど、それぞれに特徴があり、見ていてとても面白く、少しずつ覚えていきたいと思った。

素晴らしい研修を企画してくださった研修部と講師の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。 

 

〈観察した冬芽〉

ドウダンツツジ、ケヤキ、コナラ、イロハモミジ、モミジバスズカケノキ、アメリカスズカケノキ、イボタノキ、ミズキ、マテバシイ、サザンカ、カツラ、クスノキ、アカシデ、ハマヒサカキ、ヒュウガミズキ、サンシュユ、ウメ、アセビ、ハクサンボク、キブシ、トチノキ、ハナミズキ、カクレミノ、マグワ、クズ、アジサイ

 

(講師の方が枝を持参したもの)

キウイフルーツ、サルナシ、シンジュ、オニグルミ、ニガキ、ナツツバキ、フサザクラ、ヌルデ、マンサク、ハナズオウ、ハウチワカエデ

 

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11月1日(水) 「地衣類観察入門(深大寺)」 

 

 

【実施日】 2023年11月1日(水) 

【場 所】調布市深大寺周辺

【実施概要】身近にありながらなかなか知られていない

      不思議な菌類、地衣類を探す観察会

【参加者】 20名

【講 師】 藤田冨二(FIT)、中西由美子(FIT)、

      仲田晶子(FIT)

【スタッフ】小勝眞佐枝、高橋喜蔵

【報告者】 小川和恵(ブナの会/27年)

 

神代植物公園正門前で開会式
神代植物公園正門前で開会式

【本文】

当日は最高気温が22度、快晴で絶好の観察会日和となった。

参加者は3班に分かれ、はじめ講師による地衣類とはどのような生き物かの説明があり、近くにあるケヤキにつく地衣類の観察から始まった。

講師の説明に添って次々と出会う地衣類をルーペで覗くと、驚くほどのミクロ世界が広がり、参加者から「凄―い!」と異口同音の歓声が上がる。ルーペの向こうは別世界であった。

 

地衣類は、真菌類が藻類と共生し藻類が光合成をおこない、真菌類が住みかをつくる。

また協力して地衣成分を作り有害な紫外線や外敵から身を守る。このことによっていろんな環境に適応できる。

実に健気に感じる。

生育形は、葉状(ようじょう)・樹状(じゅじょう)・痂状(かじょう)の三タイプがあるとのこと。

樹木に付くものやコンクリートや岩などにも付くのもあり、へばりつく様にルーペを片手にのぞき込む姿に、

道行く人々は一種異様さを感じたようだが、夢中で誰一人気にしない・・・。

あっという間の三時間であったが、地衣類の奥深さにすっかり虜になってしまったようである。

 

地衣類は環境汚染に敏感で、それが改善され最近は少しずつ増えてきているとのこと。

目立たない存在だがいつも身近にあった生き物と実感した。

驚くほどたくさんの種類があるようだか、これからはもっと知りたいと思った。

街路樹につく地衣類をルーペで覗きながら歩き、幸せな気持ちで帰路についた。

素晴らしい研修を企画してくださった研修部と講師の皆様に心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。  

 

<出会った地衣類>

モジゴケの仲間、クロウラムカデゴケ、ロウソクゴケ、ヒメジョウゴゴケモドキ、ヤマトキゴケ、ムカデコゴケ、ウメノキゴケ、コナアカハラムカデゴケ、ダイダイゴケの仲間、バラゴケ、ヘリトリゴケ、コフキヂリナリア(コフキメダルチイ)、レプラゴケ、レプラゴケの仲間

 

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9月26日(火) 「高尾山シダ研修会」 

 

清滝駅で3班に分かれてシダの基礎についてレクチャー    
清滝駅で3班に分かれてシダの基礎についてレクチャー    

 

【実施日】 2023年9月26日(火)

【場 所】 高尾山1号路(清滝広場~金比羅台) 

【参加者】 20名

【講 師】 藤田冨二(FIT)、中西由美子(FIT)、

      仲田晶子(FIT)

【スタッフ】小勝眞佐枝、高橋喜蔵  

【報告者】 小日向礼子

 

          ハートの形をした前葉体
          ハートの形をした前葉体

【本文】

清滝駅前広場で3班に分かれさっそくスタート。

まずシダについての概要を学ぶ。

*分類 *生活環 *シダの部位の名称 *葉の二形性 

*複葉の段階 *同定のポイント(胞子嚢群のつき方 鱗片 根茎の形)など。

 

1号路を歩きだす。こんなにいろいろシダがあったのか!

講師の提示する資料とポイントの説明と実際に見て触ることでシダが身近になってくる。

まだ布流滝にさえつかないうちに12:00。

道端のベンチで昼食。

 

食後は前葉体探し。みんな自分でハートを見つけることができました。

なおも次々観察を続けて金比羅台に着いた。

 

実体顕微鏡(20倍)でサンプルを詳しく観察。

*ホシダの胞子嚢 *前葉体 *ノキシノブの楯状鱗片 *イワガネソウの胞子嚢

*ヤブソテツの胞子嚢(弾ける前と後) *イワガネゼンマイの胞子嚢

*シケシダの苞膜 *カニクサの偽苞膜と破ったもの *イワヘゴの苞膜

 

似ている種を比べる資料や同定のポイントの拡大写真などを示してくださり、充実した観察会でした。講師の方々、本当にありがとうございました。

 

観察した種は以下のとおり。

ノキシノブ ベニシダ  ホソバナライシダ  トウゴクシダ ヤマイヌワラビ ミゾシダ ゲジゲジシダ フモトシダ

ミドリヒメワラビ キヨタキシダ  ヤブソテツ ヌリワラビ  イノデモドキ テリハヤブソテツ  イワガネゼンマイ

ヤワラシダ  ゼンマイ リョウメンシダ  イノデ  キヨスミヒメワラビ シケチシダ ジュウモンジシダ  ハカタシダ

イワヘゴ  ヒメワラビ  オオバノイノモトソウ  オオヒメワラビ  イヌワラビ  マメヅタ  イタチシダ類  ウチワゴケ 

シケシダ  イワトラノオ  ホシダ  カニクサ  ワラビ (班によって多少変動あり)

 

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9月13日(水) 「火起こし研修・実践編」 

 

      参加者用に講師が用意した完成前の火起こし道具
      参加者用に講師が用意した完成前の火起こし道具

【実施日時】2023年9月13日(水)

【場所】川崎市黒川青少年野外活動センター

【実施概要】縄文時代の火起こし発火具の作成及び

                 火起こし体験実習

【講師(敬称略)】藤田冨二(FIT)

【参加者】10名

【スタッフ】高橋喜蔵

【報告者】田中清子(令和2年)

 

 

講師の説明を熱心に聞く受講生         
講師の説明を熱心に聞く受講生         

【本文】

手順の説明、安全上の注意(火種の始末は厳重になど)を受けてから、まずは「弓ぎり式」発火具の作成。材料一式は講師の加工済みなので、組立てるだけで容易に作成できる。手順は①火きり杵(棒軸、今回は竹材)の先端部分にタコ糸を巻き(火きり杵のひび割れ防止)、先棒をはめ込む、②弓の棒にヒモを通す、③火きり臼(台板、今回は杉板)に小さな三角形の切込みを入れる、④麻ヒモをほぐし鳥の巣状にして、火口(ほくち)を作る。

 

次に、もう一つの「ヒモぎり式」発火具の作成。殆どの部材は「弓ぎり式」と共通するので、ヒモぎり(2本の短い棒)のヒモ通しを行うだけで完成。そのあと、ハンドピース(軸受け)の数々を見せていただく。火きり杵(軸棒)を受ける凹みにオニグルミの殻やおはじき、ハンドピース本体としてハマグリの貝殻やクヌギの殻斗など、古代と現代の材料の工夫に驚く。なお、先棒の材料としては中空又は髄のあるウツギ、アジサイ、キブシがベスト3とのこと。

 

道具が用意できた後、屋外で火起こし体験。先に「弓ぎり式」。①弓のヒモを火きり杵に巻き付ける、②この火きり杵を火きり臼の三角形の切込みに立てる、②火きり臼は足で押さえ、火きり杵の天辺をハンドピースで押さえる、④弓を前後に引いて火きり杵を回転させ、先棒と火きり臼との間で摩擦を生じさせる、⑤火きり臼を外しても煙が出ている状態に達したら、火種を火口に移す、⑥火口に息を吹きかけて火種を大きくし、火口を持ってゆっくりと回しながら炎が着いたら手を放す。弓を引いて火きり杵を回転させる動作が難しく、参加者はかなり苦戦したが、だんだんと慣れて方々で煙が出始めた。弓を引く格好(体勢)が整ってくると、火種もできやすいように感じた。その後、二人一組になって「ヒモぎり式」で火起

こし。

 

当日は32~33℃で暑く、弓を引く作業は体力を消耗した(縄文人の大変さを実感)。参加者からは「超面白かった!」「技術の裏付けが大事」(藤田講師は魔法使いのごとく、あっという間に火種を作る)「まだ習熟できないので、3回目の火起こし研修にも参加したい」など。報告者は案の定落ちこぼれたが、さまざまに助けていただき、やっと発火。火口(鳥の巣状でかわいい)を回すのは面白く、炎がパッと出ると嬉しくなる。人数分の部材を調達・加工し、発火具作成の動画(ご自身で撮影)を事前に送ってくださった藤田講師、いろいろとサポートしてくださった研修部の高橋さん、誠にありがとうございました。火起こしには練習が必要と実感したので、持ち帰った発火具で地道にやってみようと思いました。

 

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8月19日(土) 「クモの生態を学ぶ」(横沢入) 

 

             解説する新井浩司講師
             解説する新井浩司講師

【開催日】2023年8月19日(土)

【場 所】横沢入(あきる野市)

【実施概要】生態系の重要な位置にあり、また野外で   比較的観察しやすいクモの生態を知り、今後の

   インストラクションに生かせるよう学ぶ。

【参加者】7名

【講 師】新井浩司氏(東京蜘蛛談話会)

【スタッフ】小勝眞佐枝

【報告者】藤岡眞(平成28年)

 

【本 文】

天気は快晴。熱中症が心配されるような猛暑でしたが、できるだけ直射日光を避けたり、水分をこまめに取るなどの配慮をし、全員無事にイベントを完了することができました。

里山の環境が残る横沢入には、多様なクモが生息しています。その中で、今回は、横沢入の8月に観察できる独特な、トリノフンダマシの仲間が目玉です。

 

開会式の後、さっそくトリノフンダマシの解説を受けました。名の通り、鳥の糞に似た模様をもつものから、テントウムシのような斑点模様をもつものまで、ユニークな外観をもっています。また習性もユニークで、通常クモにとっては捕獲が苦手とされているガを専門に、ゆるく張った網と巨大な粘球で捕えます。

中央湿地での観察で、枝にぶら下がっているオオトリノフンダマシの卵のう、草の裏に貼りついているトリノフンダマシやアカイロトリノフンダマシの本体を講師が見つけます。これですよと教えて貰っても、動かなければ、これがクモなのかと目を疑うほどでした。

 

その他、午前中にネコハエトリ、ナガコガネグモ、マミジロハエトリ、ヤサガタアシナガグモ、スジブトハシリグモ、カラスゴミグモ、キザハシオニグモ、アズチグモなど観察。

昼食は、屋根のある休憩所で済ませたが、その建物の隅や壁にてオオヒメグモ、イエユウレイグモ、ヒラタグモを観察。

午後は、宮田西沢方面で、ササグモ、ハナグモ、マネキグモ、アズマキシダグモ、イオウイロハシリグモなどを観察。

新しい発見があり、楽しい一日でした。

 

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7月28日(金)  「高原や亜高山の植物観察(入門編)」

 

【開催日】2023年7月28日(金) 

【場所】入笠山、入笠湿原(長野県)

【実施概要】高層湿原とその周辺の草原で

 高原の植物を観察し、花の構造や果実の

 特徴を学び、見た目や名前が似ている植

 物の見分け方を知る。

【参加者】18名(キャンセルなし)

【講師】飯田有貴夫(FIT)

    高橋喜蔵(FIT)

【スタッフ】小勝眞佐枝、福山容子

【報告者】葛西宗紀(令和2年)高橋班

 

山野草公園前の飯田講師
山野草公園前の飯田講師
  シロツメクサとアカツメクサの違いを   説明する高橋講師 
  シロツメクサとアカツメクサの違いを   説明する高橋講師 

【本文】

お天気は快晴、ゴンドラで730mの標高を稼ぐと、そこは夏風そよぐ1780mの山野草公園。お待ちかね、入笠湿原からお花畑を巡る山の植物観察が始まった。

コウゾリナの茎と葉には「剛毛」が密生している。触ってみると、なるほど会社から帰宅したお父さんの髭のようだ。講師の喜蔵さんは「この剛毛はT字状」だと言う。草をかき分けしゃがみ込んで撮ってくれたマクロ写真には、まるでバオバブのような形をした剛毛が並んでいた。

お次はマツムシソウ。頭状花がキク科に似るが、これはスイカズラ科。多数の小花は外側から順番に中心に向かって開花し、花弁は5裂するのだが、外側にある小花の、外側の裂片だけが大きな舌状となるらしい。喜蔵さんが「ダブルで舌状花」と表現されたのが面白い。

続いてはおチビさんの登場。10cm程度の総状花序に僅か直径3mmのお花をつけるミヤマタニタデ。花弁は2枚で2裂し、雄しべは2本、萼片も2枚あるよと言われても、老いた視力ではどうにもならず、喜蔵さんのマクロ写真に助けてもらった。本当に2枚2枚2枚・・だった(高見山関を思い出す)。

おチビさんの次は、日当たりの良い山地が好きな、のっぽのヤナギラン。数十cmの長い総状花序を出し、下から順番に淡紫色の花を咲かせていく。うつむき加減だった蕾が上を向きはじめると開花は近い。花は2日ほどで雄性期から雌性期へと移行する。一つの花序に下から若い果実、雌性期の花、雄性期の花、上向きの蕾、下向きの蕾が見られ興味深い。喜蔵さんが、見事にカール状に4裂した柱頭のマクロ写真(雌性期)を見せてくれた。これから成熟した果実は4裂し、綿毛を付けた種子を風に飛ばす。

私はナデシコが大好きだ。河原や草原でナデシコを見つけると明るい気分になる。入笠山では花弁の基部に生える紅い毛が特徴のエゾカワラナデシコと、花がガンピにそっくりで、日光の千手ガ浜で発見されたからと名付けられたセンジュガンピを楽しむことができた。エゾカワラナデシコのマクロ写真には、北海道の毛ガニを連想させる赤い毛が鮮明に映っていた。さすがエゾだなと思った。

 

 

ここからは、面白い!と思った素敵な植物たちをダイジェストで。ウツボグサとシロバナウツボグサは花の色が違うだけ。花弁がなく萼は早落して、雄しべと雌しべだけのカラマツソウの花。萼片間の小裂片の有無で見分けられるホタルブクロ(小裂片あり)とヤマホタルブクロ(小裂片なし)。キバナノヤマオダマキはヤマオダマキの黄色品種でどちらも距は弓形に曲がり、距が巻き込むミヤマオダマキと区別できる。輪生する葉が9階建て(例外多数)になるクガイソウ。段々につける輪状の花を仏塔の九輪に見立てたクリンソウは根生葉だけを付ける。ムカゴを付けるオニユリと付けないコオニユリ。粉芽という分身の術を使う地衣類のサルオガセ。同じバラ科でもシモツケは木本でシモツケソウは草本。シロツメクサの花は終わると下を向くが、アカツメクサは上を向いたまま。ノコギリソウの葉は1回羽状に裂けるのに対して、セイヨウノコギリソウは2~3回羽状に裂ける。総苞が粘るノアザミと粘らないノハラアザミ。シカの好物はコバギボウシ、マルバダケブキは箸が進まない。

ほかにも多くの植物を観察し説明を受けた。その数は70種以上。見て、触って、撮って、拡大して、多くを学び、大満足の観察会となった。                         

 

 【観察した植物】

アカツメクサ、アカバナ、ウツボグサ、ウメバチソウ、エゾカワラナデシコ、オオカメノキ、オオシラビソ、オヤマボクチ、カラマツソウ、カワラナデシコ、カワラマツバ、キオン、キバナノヤマオダマキ、キョウガノコ、キリンソウ、クガイソウ、クサボタン、クサレダマ、クリンソウ、コウゾリナ、コウモリソウ、コオニユリ、コハウチワカエデ、コバギボウシ、ゴマナ、サラシナショウマ、サワギク、シシウド、シモツケ、シモツケソウ、シラビソ、シロツメクサ、シロバナウツボグサ、シロバナヘビイチゴ、スズラン、ズダヤクシュ、センジュガンピ、タラノキ、チダケサシ、ツノハシバミ、ツリガネニンジン、ツリフネソウ、ドイツスズラン、ネバリノギラン、ノアザミ、ノギラン、ノコギリソウ、ノハナショウブ、ノハラアザミ、ノリウツギ、ハキダメギク、ハクサンフウロ、ヒカゲノカヅラ、ヒヨドリバナ、ブナ、ホソバトリカブト、マイヅルソウ、マツムシソウ、マユミ、マルバダケブキ、ミツトモソウ、ミヤマアキノキリンソウ、ミヤマタニタデ、モウセンゴケ、ヤナギラン、ヤマドリゼンマイ、ヤマナラシ、ヤマハハコ、ヤマボウシ、ヤマホタルブクロ、レンゲショウマ、レンゲツツジ、ワレモコウ、サルオガセ(菌類、樹上に着生する地衣)

 

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6月21日(水)  小泉 現地ゼミⅢ「高尾山」

 

地層が折れ曲がっている(小泉武栄先生撮影)
地層が折れ曲がっている(小泉武栄先生撮影)

【開催日】 2023年6月21日(水) 

【場 所】 高尾山  1号路から4号路

【実施概要】現地で以下を見ながら「なぜか」を

      考察する観察会でした。

 ① 地質・地形と樹木の性格から樹木の分布を

   見る。

 ② 露頭や崩壊地で地質を見る。

 ③ 高尾山における森林分布の概要とその特異

   性について理解する。

【参加者】18名

【講 師】小泉 武栄 東京学芸大学名誉教授

【スタッフ】小勝眞佐枝、福山容子

【報告者】立川洋一(令和4年)


 

【本文】

9時30分に京王電鉄高尾山口駅前に集合し、即、開会となった。川沿いに立つケヤキに移動し解説が始まる。・・ケヤキは自然界では岩場や礫がゴロゴロした、いわば条件の悪いところに生育する。ケヤキは新生代初期に出現したが、その後、進化した広葉樹が次々と出てきたため条件の悪いところに追いやられた。しかし「上に伸びる性格」と「生長が速く寿命が長い性格」は持ち続けたため、現在でも岩盤の上で堂々と育っている。

 

1号路に入る。崩壊地(火山灰が崩れて溜まって、また崩れたところ)で「水道(みずみち)」の説明を受ける。また、小さな沢は浸食に弱い泥岩が削られてできており、砂岩は硬いのででっぱりを作ることを知った。

 

高尾山の基盤は砂岩と泥岩。泥岩が強い圧力や高熱を受けて変成した粘板岩もある。約1億年前、まだ日本列島ができる前に(=大陸にあったころ)、大陸から日本海溝に延びる大陸斜面に河川から運び込まれた砂や泥が堆積した。そのうち泥は日本海溝の底にゆっくりと溜まり、現在の「泥岩の層」になった。一方、時々地震があると砂が移動して厚く溜まり、「砂岩の層」になった。日本海溝に交互に堆積した砂岩と泥岩が陸地に付け加えられ、上昇して小仏層群になった。100万年前には伊豆半島が関東山地へ衝突し、影響で地層が立ったところもある。1号路を真っ直ぐ上がって来て大きく右にカーブする地点に断層が見えるが、その先では、折れた地層が見える。地層が「逆くの字」に折れているのは、1億年前の海の底にあった時ではなく、ここに来て地層が立った後、上からの土砂の重みで折れたのだそうだ。

 

つづら折りを進む。南東斜面は照葉樹林(常緑樹)の暗い森になっている。霞台での昼食後、1号路を11丁目茶屋、浄心門に向かう。次々と大木が現れる。ブナ、イヌブナ、コナラ、スダジイ、ケヤキ、カヤ、モミ。北側斜面は落葉樹林、南側斜面は常緑樹林で、ちょうど境界となった稜線を進む。

 

カヤは荒れたところに出る。やせた土地に強いので、生長は遅いが硬い材ができる。モミは冷温帯と暖温帯との境界に生える。中間温帯林とも言う。生長は速いが寿命が短いのが欠点。

 

599mの低山で、気候的には丘陵帯に含まれる高尾山に植物が多いのは、小氷期と呼ばれる寒冷期の存在を加味しなくては説明がつかない。15世紀から江戸時代の末近くまで地球は「小氷期」だったため、北斜面から照葉樹林は姿を消し、代わってブナなど冷温帯の落葉広葉樹林が成立した。そのために植物が多いのだという。

 

浄心門から北に4号路を進む。北向き斜面に当たり、落葉樹が多い。イヌブナ、ホオノキ、カエデの仲間が多い。つり橋から幹が倒れても再生するフサザクラを観察。休憩ベンチのある「モミの広場」に到着し、ここを折り返し点として解散した。

 

【感想】

地質に関する基礎知識(時間スケール・プレートテクトニクス・付加体)をもっと勉強して、頭の中を整理整頓したい。「樹木の性格」も身に着けたい。そうすることで、高尾山の魅力をもっと知ることができると思う。そして、訪れる人々にいつか伝えたい。  

 

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5月27日(土)  第2回「野鳥研修~高尾山で夏鳥を聞こう」

 

今回も見返りキビタキ(講師撮影)
今回も見返りキビタキ(講師撮影)

【開催日】2023年5月27日(土)

【場所】日影沢~城山~一丁平~高尾山

【実施概要】歩きなれた高尾山で夏鳥の声を聞き、

      楽しみながら、いろいろな鳴き方が

      あることを理解する。

【参加者】5名

【講師(敬称略)】吉原邦男(FIT)

【スタッフ】小勝眞佐枝

【報告者】   吉田昇(令和4年)


【本文】

8時半、新緑が映え、そよ風が爽やかな日影林道入口広場に集合後、スタッフの挨拶、講師からの本日の説明及び参加者の自己紹介を終え出発する。

沢筋は水の音で野鳥のさえずりが聞こえにくいため道の山側を歩くようにとのアドバイスあり。進んでいくと講師よりヤブサメの鳴いているとのこと。参加者からヤブサメだ、これがヤブサメかとの声があるも、常時耳鳴りがしている私には、ヤブサメの鳴き声は全く聞こえない。さらに進み、渓流沿いの少し開け明るくなった場所に来たとことで、双眼鏡の使い方の説明があった。講師よりオオルリはこういう場所の高木のてっぺんに好んでとまっていることが多いとのこと。オオルリはフライングキャッチャーの名のごとく川の近くの見晴らしのよい高木にとまり餌を探しているとのこと。参加者全員、必死になって双眼鏡でみるも、発見できなかった。逆にキビタキは木の中程の少し暗い所にいるとのこと。

 

さらに進んでいくと、ヒステリックなヒヨドリ、なんとなく特許許可局に聞こえなくもないホトトギス、観察会中どこででも聞こえるが藪の中で最後まで姿を見ることがなかったウグイス等の鳴き声に遭遇して、初心者はわくわくする気持ちを抑えることができない。鳥の鳴き声の質、節回しを覚えることも大事とのこと。

 

カラの中でも高尾山中ではヤマガラが多いようだ。鳴き方が一番遅いのはコガラでツツビー‐ツツビー、次に遅いのはヤマガラでツツビー‐ツツビーとかビビー‐ビビーと鳴く。速いのがシジュウカラでツツピー‐ツツピー。一番速く音が高いのがヒガラでツピ‐ツピと鳴くようだ。鳴き声をカタカナで表すのはむずかしい。

城山山頂で昼食後一丁平から高尾山へと進む。遠くに見える高木の繋がり伝いに双眼鏡で一方向に見ていくことをバードウォッチヤーの言葉で「なめる」と言い、鳥を探す手法だそうだ。

 

萩原作業道への分岐点の少し手前でチーピリ-チーピリというキビタキの鳴き声に遭遇する。全員緊張しシーンとして鳴き声のほうを探す。参加者全員がやっとキビタキの背中が黄色く愛らしい姿を見つけることができ、写真撮影に成功する。夏鳥の代表である青色のオオルリは見ることはできなかったが、もう一方の雄であるキビタキをこの目でみることができ参加者全員大感激でした。

鳥の鳴き声や姿に堪能し、エビネ、フタバアオイ、サイハイラン、そして最後にセッコクの花も観察でき非常に充実した一日でした。こういう機会を提供していただいた講師、幹事、及び研修部の皆様に感謝する。参加者の皆様お疲れ様でした。

 

鳥合わせ

姿:ハシブトガラス、ヤマガラ、ヒヨドリ、ヤブサメ、エナガ、メジロ、キビタキ、スズメ 計8種類

声のみ:ホトトギス、ツツドリ、コゲラ、アオゲラ、サンコウチョウ、カケス、ヒガラ、シジュウカラ、ウグイス、クロツグミ、オオルリ、イカル、ガビチョウ 計13種類 合計21種類

 

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5月17日(水)  第1回「野鳥研修~高尾山で夏鳥を聞こう」

 

見返りキビタキ。美しい声と姿に参加者全員が魅了された(講師撮影)
見返りキビタキ。美しい声と姿に参加者全員が魅了された(講師撮影)

【開催日】2023年5月17日(水)

【場所】日影沢~城山~一丁平~高尾山

【実施概要】歩きなれた高尾山で夏鳥の声を聞き、

      楽しみながら、いろいろな鳴き方が

      あることを理解する。

【参加者】9名

【講師(敬称略)】吉原邦男(FIT)

【スタッフ】小勝眞佐枝、高橋喜蔵

【報告者】   小野梨香(30年)

 


【本文】

晴れて日差しが暑いが爽やかな日影林道駐車場にスタッフと参加者が集合した。

スタッフの挨拶、講師からの簡単な説明、双眼鏡の使い方の説明、参加者の自己紹介を終え、早速林道を歩き始める。すぐに鳥たちの声が聞こえてくるのだが、沢沿いを歩くので水音で鳥の鳴き声を聞き取れない場合がある。そのためになるべく山側に寄って耳を傾けると良いと説明を受けた。渓流から少し離れるだけで違うものだと納得した。声高くきれいな声は良く聞き取れるが誰の声?となる、キビタキとのことだった。次に講師がヤブサメだと教えてくれた、まるで虫が鳴いているかのような声を聞き取れた!という方々、聞き取るのが難しく、え?と首をかしげてる方々、に分かれ笑いも起こり和気藹々、歩みを進めていった。

 

一羽の鳥でも様々な鳴き方があるということで、キビタキ、ヤマガラ、コゲラ、シジュウカラ、コガラ等の「聞きなし」の一部やリズムがあると教えて頂いた。

また鳥によって高い山にいることが多い、低山や人里にも来る鳥もあることも説明を受けた。キビタキ、誰でも分かるウグイス、ヤマガラ、シジュウカラの声を聞きながらも鳥も鳴かない静かな時間もあり、そんな時にフタバアオイの花が終わり実になろうとしている植物観察も行った。

 

渓流沿い等の木のてっぺんにオオルリがいることが多いとのことだ。その高いきれいな鳴き声の主のオオルリを皆で探すがそう簡単には見つけられなかった。歩みを進め、再び植物観察だ。ヒナノウスツボの花が終わり実になり始めている様子を見ることが出来た。ところどころ、聞こえる派、聞こえない派に分かれるヤブサメの声、シジュウカラ、「焼酎一杯グイー」という聞きなしのセンダイムシクイ、「特許許可局」の聞きなしのホトトギス、ヤマガラの声、そして大きな声で真似するガビチョウの声を聞きながら歩く。

 

城山山頂で昼食休憩を取り、歩き進めて一丁平から高尾山へ向かう午後の始まりとなった。

講師から説明を受けたメジロの長く複雑な鳴き方、ウグイスの土地によって方言?のような鳴き方も楽しみ、ヒガラ、ヒヨドリ、の声も聞きながら歩いた。途中アヤメが咲いていてここでは幹事が花の構造の説明をしてくださった。

そうして細い登山道で講師からこの場所で鳥の姿を見やすいと説明を受けた途端、キビタキが姿を現してくれて参加者全員が、綺麗な黄色の背中を向けた姿、首から胸にかけたオレンジ色~黄色をした正面の姿をじっくり堪能した。異口同音にきれいな色だね~などと言いながら、うっとり見ていた。

 

鳥の声や姿も堪能し、エビネ、サイハイランやカンアオイの花も観察できた。最後の高尾山からの下りの途中ではニホンリスの食事をしている姿も見ることが出来、アサギマダラが優雅に飛び、マルバウツギの花に長らく止まって蜜を吸う姿、また飛んでは違う花に止まり綺麗な羽を披露してくれる姿にもしばらく釘付けになった。

慰霊塔広場で鳥合わせ、振り返りをして終了となったが、楽しく充実した一日を過ごすことが出来た。

こうした機会を設けてくださった幹事、講師に深い感謝の気持ちでいっぱいだ。そして他の参加者のみなさまもどうもありがとうございました。

 

鳥合せ

声のみ:ホトトギス、アカゲラ、アオゲラ、カケス、ヒガラ、シジュウカラ、ウグイス、ヤブサメ、センダイムシクイ、クロツグミ、オオルリ、イカル、サンショウクイ

姿:コゲラ、ヤマガラ、キビタキ、ホオジロ、キジバト、トビ、ヒヨドリ、メジロ、ハシブトガラス 

番外声:ガビチョウ

 

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4月29日(土) 「樹木観察入門」

 

最初は首掛けイチョウの解説から
最初は首掛けイチョウの解説から

 

【開催日】 2023年4月29日(土) 

【開催場所】日比谷公園

【実施概要】1903年(明治36年)開園の日本初の洋式庭園である

      日比谷公園にて、 樹木観察入門研修。

【参加者】 17名

【講師(敬称略)】大石征夫(FIT)、高橋喜蔵(FIT)

【スタッフ】小勝眞佐枝、高橋喜蔵

【写 真】 小勝眞佐枝

【報告者】 立川洋一(もりもり会/令和4年)

 


【本文】 

参加者17名を2班に分け、高橋講師は観察経験豊富な9名、大石講師はR3、R4を中心とした経験が比較的少ない8名を率いた。報告者(立川)は大石班で「一般の方を案内する時に参考になること」の教えを受けた。説明役は太陽を受ける方に立つ、絵を描くことはよく見ることにつながる、定期的に通うマイフィールドを持つ、五感を使う等々の基礎的な教えが一つ一つ身体に染み入る。

 

まず、集合場所のイチョウ巨木(樹齢400年以上か)。1901年に日比谷通りの拡幅工事で(当時、既に樹齢300年で移植不可能だろうからと)伐採されようとしていたイチョウ巨木を本多静六博士が「私の首をかけて」でも開設予定の公園内に移植を成功させると東京市参事会星亨議長に申し出た。参事会は多額の費用支出を認め生育場所からレールを敷設して移動させたそうだ。明治の気骨ある人々の話を聞き、巨大な幹周りのイチョウを改めて眺めた。ある種大変ホットな、かつ、複雑な話と感じた。

 

ハゼノキの説明ではクモ図鑑や「和ろうそく」現物が講師持参のバッグから登場した。ハゼの実はクモのサツマノミダマシに似ている、実から得られる木蝋から「和ろうそく」ができる。ヤマモモの前では「九州では桃と言えばヤマモモ」と有用性や人との関わりから、葉の付き方までの説明があった。

 

クスノキは公園内に多く、新緑が見事だった。常緑樹だが春に落葉し新葉にほとんど入れ替わるそうだ。光合成をより活発に行い、成長のためにコストをかけているのだろうかと想像した。講師はシロダモとヤブニッケイの葉をバッグから取り出し、同じクスノキ科の三行脈を説明した。また、セルロイド、樟脳、カンフル剤などに使われ、1902年から1962年まで樟脳は専売制だったという話も歴史的産物だったことを知りワクワクした。

 

ムクロジの樹下では、拾った実を割って水のペットボトルに入れシェイクしシャボンを作った。また、高橋講師が炒って用意してくださった、ムクロジの種を金づちで割り、茶色い核心部をかじる体験をした。ナッツの香ばしさと甘みが印象に残る味だった。

 

講師の事前準備、手作りファイル「日比谷park」を駆使した説明の手順に驚きつつ、日比谷公園の樹木と触れ合うことができた。

 

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4月14日(金) 「学名から迫る植物の素顔」

 

          学名研修中の参加者
          学名研修中の参加者

【開催日】2023年4月14日(金)

【開催場所】小石川植物園

【実施概要】実際に植物及び樹名板を見ながら学名の基本を学び、

                  植物の素顔に迫る入門コース

【参加者】14名

【講師(敬称略)】横山茂(FIT)、高橋喜蔵(FIT)

【スタッフ】高橋喜蔵

【写 真】高橋喜蔵、廣川妙子

【報告者】西出幸子(もりもり会/令和4年)

 

【本文】

世界中の植物学者・植物愛好者の共通語である「学名」を学ぶ研修が、ツツジやフジが満開の小石川植物園で実施された。講師が樹名板のラテン語の学名をサラサラと読み上げながら、45種近い植物の学名を解説してくださった。ラテン語の語尾の活用の話はいったん忘れて、学名の基本の仕組みを覚えるようにという講師のアドバイスに従って、興味深かったポイントを取り上げたい。

 

ハナズオウの学名を資料を見ながら学ぶ       
ハナズオウの学名を資料を見ながら学ぶ       

 ①  種名は「属名」+「種形容語」で構成。

   その後に「命名者」が続く。

短い学名のイチョウGinkgo biloba L.

種名は、カール・リンネによって1700年代に体系化された二名法に従い、「属名」と「種形容語」で構成される。「Ginkgo」はイチョウ属。銀杏Ginkyoを登録したときの誤植でGinkgoとなったそうだ。“ギンクゴ“ってなんだろうと漠然と思っていたので、このトリビアに俄然興味が湧いてくる。「biloba」は“2つに裂けた“という意味で葉っぱの特徴を表す。図鑑では省略されることも多いが、「属名」と「種形容語」の後に、「命名者」が記載される。「L.」はリンネで、ピリオドは省略されていることを示すが、1文字の省略形はリンネのみが認められているそうだ。

 

②  学名が更新された場合、

   最初の命名者名は括弧内に表記される。

例えば、ソメイヨシノCerasus x yedoensis (Matsum.) Masam. Et S.Suzuki ‘Somei-yoshino’

小石川植物園の初代園長を務めた松村任三氏が1901年に名付けたが、後に鈴木氏によってPrunus(スモモ属)からCerasus(サクラ属)に属名が変更されたので、松村氏は「(Matsum.)」と括弧書きされている。

「x(クロス)」は天然交配種(雑種)であること、「‘ ’(シングルクォーテーション)」で括ったものは栽培・園芸品種名を表す。

            サツキは日本固有種だが。
           サツキは日本固有種だが。

 

③  「種形容語」は植物の特徴を示すとは限らない。

次は、サツキRhododendron indicum (L.) Sweet

「Rhododendron」は「rhodon(バラ)」+「dendron(樹木)」でツツジ属。「種形容語」が厄介で、植物の特徴を表すとは限らず、人名や地名も多い。人名がつけられる場合は「献名」といい、命名者が決めているので献名理由は様々とのこと。サツキの「indicum」は「インドの」という意味だが、サツキは日本固有種。リンネが命名したときはインドからヨーロッパにもたらされていたことに由来するそうだ。

 

ハチジョウキブシを学名とともに観察中       
ハチジョウキブシを学名とともに観察中       

④  学名は先に命名されたほうが基本種になるため、

   基本種と亜種/変種/品種の逆転が起こることもある。

アジサイ:Hydrangea macrophilla (Thunb.) Ser. f. macrophilla

ガクアジサイ:Hydrangea macrophilla (Thunb.) Ser. f. normalis (E.H.Wilson) H.Hara

亜種はssp.またはsubsp.、変種にはver.、品種にはf.がつき、この違いは、基本種との差異の多少によって決められる。

アジサイの例だと、「Hydrangea macrophilla (Thunb.) Ser.」までは同じだが、「f.(品種)」以下が異なる。基本種には「種形容語」が自動的につき、このことを「自動名」と呼ぶ。ここで受講者から「ガクアジサイが原種なのに、なぜアジサイに自動名がついているのか?」という鋭い質問があった。学名は最初に命名したものが基本種になる先取特権があるので、園芸種であるアジサイが基本種に、あとから命名されたガクアジサイが変種となっているそうだ。

以上、2時間の研修のうちの、ほんの一部しか取り上げることができないほど、中身の濃い研修だった。学名を少しでも好きになってほしいと話す講師の熱意にあふれた解説のおかげで、学名には、研究者等の300年以上に渡る人間らしいドラマが詰まっていることが分かった。園内の樹名板からは、牧野富太郎が初めて命名した学名、人の命名を後から変更した

もの、自分の命名を自ら変更したもの、などが読み取れ、今話題のNHK朝の連続ドラマ『らんまん』も前のめりで見ることができそうだ。これからは、図鑑や樹名板の学名に注目したり、講師におすすめいただいた『植物の学名を読み解く』(田中學著)を読んでみたりしたい。

 

 参考URL)「BG Plants 和名-学名インデックス」YList 植物和名-学名インデックス

 

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4月8日(土) 「スミレ研修」

 

       山で見たい花ランキング第2位のタカオスミレ
       山で見たい花ランキング第2位のタカオスミレ

【開催日】2023年4月8日(土)

【開催場所】日影~高尾山~霞台

【実施概要】スミレを中心とした春の草花の

      見分け方や観察の視点の説明と観察

【参加者】16名

【講師(敬称略)】中西由美子(FIT)、

        仲田晶子(FIT) 

【スタッフ】高橋喜蔵

【写 真】高橋喜蔵、戸部美紗子

【報告者】戸部美紗子(森守会/令和4年)

 

【本文】

 各班に分かれて、スミレ科の概要、スミレの生活史、スミレの花の作りなどの基本について説明を受けた。スミレの見分け方のポイントとしては、①地上茎の有無、②花弁の色・形、③めしべの上部(柱頭)の形、④托葉の切れ込み具合、⑤唇弁の距の形(丸いのか、細長いのか)、⑥側弁の根元に毛があるかなどがあり、これに加えて、講師の先生は、生えている環境をチェックしていると教えていただいた。

 その後、フィールドで実際にスミレ等の観察を開始。まず、アオイスミレの葉を観察した。春一番に花を咲かせるとのことで、残念ながら花は終わっていたが、葉や葉柄に毛が多いという特徴が見られた。また、一見地面から生えているように見えたが、托葉が目立つことから、地上茎があることがわかりやすいとのことだった(地上茎がないものも葉の生え際に托葉がある。)。

                                                                                        丸顔のマルバスミレ                                     
丸顔のマルバスミレ            

 次に、きれいな淡い紫色をしたタチツボスミレを観察した。托葉が櫛の歯のようにギザギザとしていて、距が細長い、花の中心が白い、葉はフリルのような鋸歯があるハート形という特徴があった。

 その後、ナガバノスミレサイシン、マルバスミレ、エイザンスミレ、タカオスミレ(ヒカゲスミレの品種)、などに出会った。マルバスミレは白い花を咲かせていて、正面から見ると丸顔、葉の表面はシワシワしていてツヤがない。咲く時期としては、スミレの中では真ん中くらいに咲くもので、ちょうど今頃が真っ盛りのようだった。

 エイザンスミレは花の色はピンクがかっていて、上弁がウサギの耳のように立ち上がっていた。最初に比叡山で同定されたためこの名前が付いたそうだ。タカオスミレは、当初は葉の両面が黒いものをタカオスミレと呼んでいたが、最近は、葉の裏が黒くなくてもタカオスミレと呼んでいるということを教えていただいた。花は白く、唇弁に紫の線(蜜標)があった。涼しいところ、日陰に咲くそうだ。

 日影沢キャンプ場では、タチツボスミレの花の解剖・観察と、実体顕微鏡でのエライオソームの観察を行った。

 

            ナガバノアケボノスミレ
            ナガバノアケボノスミレ

 お昼休憩後は、スミレ等の観察を再開。ヒカゲスミレ、ナガバノスミレサイシン、エイザンスミレ、ヒナスミレ(葉を

観察)、コミヤマスミレ(葉を観察)、ツボスミレ(葉を

観察)、ナガバノアケボノスミレ、オカスミレ(アカネスミレの変種)、オクタマスミレ(ヒナスミレとエイザンスミレの雑種)、ヒメスミレなどを観察した。

 ナガバノアケボノスミレは、ナガバノスミレサイシンとアケボノスミレの雑種で、葉はアケボノスミレに似ているがアケボノスミレよりも縦長で、花の色は幅広い、距が丸いといった特徴があるとのことだった。地下茎を伸ばしていることから、群生する性質があるようで、近くに複数の花が見られた。

 終盤では、ヒメスミレを観察した。濃い紫色の花は、他のスミレに比べて小さくかわいらしい花だった。コンクリートや石の間などを好んで咲くようで、石の間から顔を出しているたくましい姿には驚いた。また、そこでは、ムササビのフンや食痕(アカガシの葉をかじった跡)も観察することができた。

 霞台で班ごとに振り返りを行い、解散した。

 この研修会では、スミレの他にも多くの植物を観察することができた。講師の先生や他の参加者の方々は、葉を見ただけでもすぐに見分けることができており、私も少しずつ見分けられるようになりたいと思った。

 大変楽しく勉強になる研修を企画してくださった講師のお二人と研修部の皆さまに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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3月5日(日) 「野鳥研修・昭和記念公園の野鳥を楽しむ」

 

開会式は水鳥の池の前で
開会式は水鳥の池の前で

【開催日】2023年3月5日(日)

【開催場所】国営昭和記念公園

【実施概要】野鳥観察の説明と実践

      国営昭和記念公園の歴史や植物の観察

【講師(敬称略)】香川 淳(FIT)、加藤 勝康(FIT)

【参加者】15名 

【スタッフ】小勝 眞佐枝

【写 真】内藤 公雄、小勝 眞佐枝

【報告者】西出 幸子(森守会 令和4年)

 


マガモの群れ             
マガモの群れ             

【本文】

昭和記念公園の興味深い歴史を伺った後、早速、野鳥観察時の注意点や双眼鏡の使い方について教えていただく。東京都(島しょ部含む)では、日本にいる野鳥約650種のうち、なんと約400種が観察できると聞き、期待に胸が高鳴る。

 まずは、水鳥の池でヒドリガモ・マガモ・カルガモ・カワウと樹上のイカルを観察。ヒドリガモのオスは頭がレンガ色、メスは頭が褐色。マガモとの見分け方を教わる。カモ科は、繁殖期が終わると、夏にはオスも目立たない羽に換羽し、その時は一時的に飛べなくなるそうだ。イカルは、昔はさえずりを「お菊二十四」とききなしていたが、今は「キィーコーヒー」と教わるとのこと。群れで飛んでいた。

 ここからは、「野鳥観察は耳が9割」とのことで、耳を澄ましながら木々の間を歩いていく。私の耳にはヒヨドリの声しか聞こえないが、講師はヒヨドリの鳴き声は”ノイズキャンセリング”しているというから驚く。「メジロがチュルチュル鳴いています。」「あっ、エナガの声もしますね。」「シメが丈夫な嘴で堅い種子を砕くピチッ、ピチッ聞こえますか?」「キセキレイがチチン、チチン鳴いていますね。」などなど教わり、鳴き場所が特定できると講師の望遠鏡で鳥の姿をとらえ見せていただく。

               カシラダカ
               カシラダカ

段々、耳を澄ます→鳴き声が聞こえた方で動きがないかじっと探す→動きが見えたら双眼鏡を向ける、という一連の流れが分かってくる。個人的には最初のハイライトはシジュウカラだった。シジュウカラは“First Bird”と呼ばれるほど初心者に人気で、シジュウカラをきっかけに野鳥ファンになる人が多いとのことだが、御多分にもれず、私も翼の白黒ストライプとネクタイ姿に完全に”落ちて”しまった。

 その後は、シロハラ、残堀川沿いで橙色のお腹が愛らしいジョウビタキ、こもれびの丘の手前で、ツグミ、コゲラ、ヤマガラ、アオゲラ(声だけ)など全部で27種の野鳥を観察でき、興奮が収まらないままの観察会終了となった。

 ランチ後は希望者のみ、ゆっくり復習しながら駅まで戻ることに。ウラジロモミの樹上でクモの巣を採集するエナガ,や、シジュウカラやキジバトまで襲うとは思えない美しいモズのオスとメス、残堀川沿いでオリーブグリーンの体が美しいアオジと3羽のカシラダカなどを参加者の皆さんと観察できた。最後に、標高の高い森で見るコガラとヒガラの可愛らしさはシジュウカラ以上と伺い、これから静かに遠くから野鳥とつき合っていきたいと思った。

 素晴らしい研修を企画してくださった講師のお二人と研修部の皆さまに心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

【観察した鳥】

・野鳥合計:27種

ヒドリガモ、マガモ、カルガモ、キジバト、カワウ、コゲラ、アオゲラ、モズ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、

ヤマガラ、シジュウカラ、ヒヨドリ、ウグイス、エナガ、メジロ、シロハラ、ツグミ、 ジョウビタキ、スズメ、

ハクセキレイ、キセキレイ、カワラヒワ、シメ、イカル、アオジ、カシラダカ

・外来種:2種

カワラバト、ガビチョウ

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